外国通貨間の取引で為替差益 最高裁「課税対象」と判断
2026/07/31
外国通貨を別の外貨に交換する取引などを行った際、円換算で生じた為替差益は所得税の課税対象になるのか否かで争われていた裁判で、最高裁第三小法廷は6月16日、課税対象と判断し、納税者の上告を棄却する判決を下した。
上告人は日本に居住する納税者。平成26年5月、スイスに本店を置く金融機関に本人名義の預金口座へ合計105億円を送金し、同年7月、同金融機関にその運用を一任した。
同金融機関は、同年7月から翌年12月までの間、運用の一環として、運用対象資産に属する外国通貨によって他の種類の外国通貨や外国通貨建ての有価証券を取得する各取引を行った。
納税者は、各取引から所得が生じないことを前提に、平成26年分および平成27年分の所得税等の各確定申告をした。
これに対して税務署は平成30年9月、各取引により為替差損益に係る雑所得が生じているなどとして、所得税等の各更正処分および過少申告加算税の各賦課決定処分をした。納税者はこれを不服として、最終的に裁判で課税処分の取り消しを求めていた。
納税者は、「外国通貨により他の種類の外国通貨または同一の外国通貨建ての有価証券を取得する取引が行われても、為替変動のリスクが依然として存在し、為替差益は確定しないから、各取引に係る為替差益に課税することは、未確定、未実現の利益に課税するものとして許されず、為替差益を各取引が行われた日に属する年における『収入すべき金額』とし、平成26年および平成27年において各取引により為替差益に係る所得税が生じているとした原審の判断には、同法の解釈適用の誤りがある」などと主張した。
しかし、最高裁は、「所得税法は、所得を外部からの経済的利益の流入という収入の形態で捉え、原則として、収入の形態で実現した利得のみを課税の対象とする」としたうえで、「所得金額および所得税額の計算について本邦通貨の額面価格の単位を基準に行うことを当然の前提としている」と指摘。

そのうえで、「外国通貨により他の種類の外国通貨又は同一の外国通貨建ての有価証券を取得する取引が行われた場合、変動する外国為替の売買相場の下で本邦通貨との関係において変動していたある外国通貨の経済的価値が、上記取引により他の種類の外国通貨又は有価証券の経済的価値をもって固定化され、他の種類の外国通貨又は有価証券の経済的価値が流入することによって、ある外国通貨の取得時の経済的価値を上回る部分が実現した利得となるとともに、上記取引時に他の種類の外国通貨又は上記有価証券に係る権利が収入の原因となる権利として確定することから、その時点における他の種類の外国通貨の金額又は有価証券の価額の円換算額を『収入すべき金額』とすべき」とした。
そして、「居住者が、外国通貨により他の種類の外国通貨または同一の外国通貨建ての有価証券を取得する取引を行った場合、上記取引を行った日の属する年分の所得の金額の計算上、上記取引時における他の種類の外国通貨の金額または有価証券の価額の円換算額が『収入すべき金額』となると解するのが相当である」とし、「円換算額から支払に用いた外国通貨を得るのに要した金額等を控除した金額が、上記取引に係る所得の金額となるというべき」と判断し、一審、二審判決を是認した。
【林裁判長の補足意見】
なお、林裁判長を含む3名の裁判官から補足意見が出された。林裁判長は今回の判決について、「あくまでも為替差損益に係る課税について明文の規定がなく、外国通貨によって他の種類の外国通貨や同一の外国通貨建ての有価証券を取得する取引に係る所得の把握についても本邦通貨の額面価格の単位を基準に行うほかない現行法を前提とする解釈論にとどまる。外国通貨建ての投資や国際取引が日常的に活発に行われている現状において、所得の把握を常に本邦通貨の額面価格単位を基準に行うこと自体に問題がないかも含めて、外貨建取引に係る所得税の課税の在り方を改めて検討すべき時期に来ていると考えられる」と指摘した。